テレビゲームへの正しい理解を
泰羅 雅登教授インタビュー
(日本大学大学院総合科学研究科教授)

第3回 ゲームを家庭内のコミュニケーションツールに

taira“個人対ゲーム”ではなく、家族みんなでつきあえるゲームを

――先生ご自身はゲームをされますか?

泰羅:僕はあんまりしないんです。というのは、あんまり上手じゃないんです。『インベーダーゲーム』時代に、どれだけお金を使ったかっていうのがあって(笑)。ロールプレイングゲームはずいぶんやりましたけど、すぐに子どもに追い抜かれましたしね。

――そういうご経験を踏まえて、ゲームの利点は何だと思いますか?

泰羅:やっぱり気分転換にはなりますよね。リフレッシュできるし、ちょっと時間が空いたときの暇つぶしとかね。

――それでまたハマッてしまう心配は無いでしょうか?

泰羅:でも僕らの学生時代だって、朝までマージャンしていましたからね。「それとゲームとどこが違うの」って聞かれたら、そんなに変わらない気もします。小学校のころから家庭内マージャンをしてましたし、そういう意味では『モノポリー』とか『人生ゲーム』とかも含め、ゲームが「家庭内のコミュニケーションツール」になってましたから。

――そんな中でコンピュータゲームだけが悪者扱いされるのは、登場の仕方があまりにも衝撃的だったからなのかもしれませんね。

泰羅:そうですね。それと問題は、「コミュニケーションツール」という形ではなく、「一対一の向き合い」になってしまったところですよね。それが特異なイメージを与えてしまったんじゃないでしょうか。

――そう考えると誤解がかなり大きいだけで、ゲームを取り巻く環境自体は意外に人間的かもしれませんね。

泰羅:「それまでなかったものがどういう影響を持つか」なんて、出てきた当初は「誰にもわからない」じゃないですか。最初にバンと出てきて、いろんなことを経て文化として認められてきて、良いところも悪いところもわかってきた。まだわかってないこともありますけれども、「ある程度社会的なコンセンサスが得られた」っていうことはあるんじゃないですかね。

――先生のご専門である認知科学とはどういう学問ですか?

泰羅:別に難しい話ではなくて、「人間はどうやっていろんなものを知覚して、それを自分の感覚としてどう捉えていくのかというメカニズムを調べましょう」っていうことです。「見えているというのはどういうことですか」とか、「自分では体は動いてないのに、体が動いたように感じるのはどういうメカニズムのおかげなのか」とか、「ものが立体的に見えるのはどういうメカニズムなんですか」っていうことを調べてるわけです。

――認知科学的な観点からも、別に「ゲームは悪者ではない」ということになりますか?

泰羅:悪者ではないですね。ただ、視覚的な要素はものすごく強いです。人間はパッと見たものを脳のなかで順繰りに視覚の情報処理をしていくんですけれども、いちばん最初に脳に入ってきた部分に対する影響っていうのは、他の影響よりはだいぶ強いかもしれません。「視覚で捕える」というのはゲームの特性で、その影響はたぶんあると思います。たとえばゲームでは3Dに見せるために、僕たちがふだん経験しているよりも奥行き感を少し強調してあるんですね。それから加速度感もたぶん、普通の動きよりもちょっと強調してあるんです。その誇張表現っていうのは強くて、相当効くんだと思うんですね。

 「ゲームが普通に見えるように作ってあったら、あんまりおもしろくない」っていうことだと思うんですけれど。でも作る人は、「誇張した映像表現がどういう影響を持っているか」を考えるべき時期に来ているとは思います。

――今後、人間はゲームとどうつきあっていくべきだと思われますか?

泰羅:やはり「家に持ち込むときに、どうすべきか」っていうことだと思いますね。特に、子どもさんに最初にゲームを与えるときのやり方次第だと思います。だからそのためには親御さんも「ゲームは怖い」というだけではなく、「ゲームの特性はこういうものなんだよ」っていう観点から充分に注意をしてもらわなければいけない。それと、子どもさん自身に対するゲームのリテラシーはやっていかないといけないでしょうね。

――結局、先ほどの“家族のコミュニケーション”につながりますね。

泰羅:だから家庭に持ち込んだときに、「家族のコミュニケーションツールとして使えるようなゲームを考案してもらえるかどうか」ですよね。「個人対ゲーム」ではなくて、あくまでも『人生ゲーム』みたいな、「みんなでつきあえるようなゲーム」を持ち込めるかどうか、そういうところじゃないでしょうか。

――「引きこもりの人がゲームばかりしているので問題がある」というような話をよく聞きますが、問題があるのはそこではなくて「(その前の段階の)コミュニケーションができていないことが問題」であり、コミュニケーション能力を高めることが大切なんですね。

泰羅:たぶんそうだと思うんですね。「ゲームに熱中して引きこもりになった」というよりも、「いろんな状況があってひきこもったときに、ゲームはひとりでできてのめり込めるし、楽しいからそこしか行くところがなくなってしまった」という、大半はそっちの方だと思いますね。



泰羅 雅登(たいら・まさと)
1981年東京医科歯科大学 歯学部卒業。1985年東京医科歯科大学 大学院 歯学研究科修了。日本大学医学部助手、講師、専任講師、助教授、教授を経て、2005年より日本大学大学院総合科学研究科教授。神経生理学および認知科学を専門分野とし、現在は三次元視覚情報処理の神経メカニズムの解明 (KEYWORD:頭頂連合野 , 機能的MRI)、頭頂連合野における三次元形能認知の神経メカニズムに関する研究 (KEYWORD:三次元物体 , 認知 , 頭頂連合野)、頭頂連合野における視覚性運動制御の神経メカニズムに関する研究 (KEYWORD:視覚 , 運動制御 , 頭頂連合野)、fMRI PETによる運動制御、視覚認知メカニズムに関する研究 (KEYWORD:fMRI,PET,視覚性運動制御)を研究課題としている。脳を鍛えて頭を良くする―仕組みがわかれば実力は伸びる(ライオン社)等、著作多数。


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