テレビゲームへの正しい理解を
七海 陽先生インタビュー
(相模女子大学学芸学部子ども教育学科専任講師)

第3回 ゲームがあってもいいが、ゲームに偏ってしまうのはよくない

七海 陽先生生活習慣をバランスよく保つ

――ゲームがすぐそこにあるという環境下で、具体的に子どもをどう教育していくことが有効だとお考えですか?

七海:とにかく「生活習慣をバランスよく保つ」ということが第一ですね。子どもは、世の中の刺激をバランスよく吸収して発達していくのが望ましいんです。ですから、ゲーム中心の生活にならないように気をつけなければいけないですよね。

――ゲームについて子どもに教える際には、何が大切だと思いますか?

七海:ゲームに限らず、幼児期に作っていく「メディア習慣」が大事だと思っているんです。現実に家庭では多くのメディアと接しているのですから、保育所や幼稚園の年中・年長さんぐらいから少しずつ「メディアとのつきあい方」を学んでいった方がいい。例えば“どのくらいの距離を取っていけばいいのか” とか“どんなメッセージを伝えているか”“それはどうしてか”などを、子どもにわかりやすく教えていくことです。保護者への情報提供も必要です。そんな中から子どもが徐々に自分でメディア・リテラシー(メディアを読み解く力)を身につけていけば、小学校高学年、中学生になったときにもうまくつきあえるようになる。もし、ゲームを与えるのならそういうことも想定しながら「将来、自分の子どもがゲームとうまく向き合えるようになる」ために、「今何をすべきか」を考えて、しつけや教育をしていくという考え方です。

――たしかに小さいお子さんですと、ゲームへの順応性もありますしね。

七海:2、3歳でも単純なゲームは覚えてしまいますからね。でも、「一人でさせないこと」が大事です。親御さんが傍らで「子どもが何を学んでいるのか」「何を発見して楽しんでいるのか」を言葉にしながら、一緒に遊んでほしいです。乳幼児期は、ゲームよりもまず人間として生きていくために社会や家庭環境に適応していくことが第一です。日常生活のどんな細かいことも一つひとつ学んでいるので、とても忙しいのです(笑)。ですから、その一部としてゲーム遊びがあってもいいと思いますが、ゲームに偏ってしまうのはよくないですね。

――今後、ゲームはどう変化すると思われますか?

七海:私見ですが、バーチャル・リアリティ技術によって「皮膚感覚に近いもの」になってくるだろうとは思います。まずは3D映像が当たり前になってきて、 “特殊メガネ”をかけなくても立体的でよりリアルな映像でプレイできるようになるでしょうし。

――将来の変化に対し、「気になること」はありますか?

七海:皮膚感覚に近づくとなると、人間の感覚から脳での情報処理がどうなっていくのかは気になります。特に、情報処理のしくみが発達過程にある子どもにどのような影響を及ぼすのかが気がかりです。もうひとつは、「ゲームそのもの」というよりも「ネットコミュニケーション」についてです。オンラインゲームのコミュニティで共同作業をしたりして育ってきた人たちには、“新しいコミュニケーション感覚”を感じるんです。

――どのようなところでそのように感じますか?

七海:たとえば「ネットコミュニティへの書き込み」を挙げると、彼らはすごく上手に書き込むんですよね。私は「これを書いたらどう思われるか」とか躊躇するので書き込む前に気疲れしてしまったりするのですが、そこを難なくクリアしているんです。新しいコミュニケーションスキルを身につけているわけですね。でも、実際に会って話をしてみると、ネット上のように流暢じゃなくて「あれ?」と思うとか。もちろん全てじゃないですよ。ただ、「このようなギャップは果たして何を意味するのか?」と考えたりはします。

――確かにそれは気になるところですね。ではそのような状況下、今後ゲームや携帯電話の立ち位置はどのように変化していくと思われますか?

七海:今より更に社会的なツールとして浸透するだろうと思いますね。たとえば、「教科書が紙媒体ではなくなる」という可能性もありますよね。そうなるともう否定していても仕方が無いわけで、「そんな中でいかに人間らしく生きていくか」っていう逆の発想をしないと、人間としてのバランスを保てなくなってくると思うんですね。なぜなら人は「アナログな生き物」ですから。そういう意味ではゲームにしても他のことにしても、結局は「使う側次第だ」ということに多くの方が気づいて、共存できる世界を作っていくのが望ましいと思います。



七海 陽(ななみよう)
専門は児童文化学、子どもメディア論など。白百合女子大学文学部児童文化学科卒。 1990年富士通(株)入社。情報産業向けコンピュータシステム営業、BSデジタルデータ放送会社設立などに従事し、2002年フリージャーナリストへ転身。情報化社会での子どもの育ち、デジタルメディアと子どもの発達について調査研究、執筆、講演など社会活動を行う。白百合女子大学児童文化研究センター研究員、お茶の水女子大学文教育学部心理学講座研究員、白百合女子大学・東京工芸大学兼任講師、2005年浜松大学こども健康学科専任講師を経て、2009年より現職。著書に「佐藤家のデジタル生活 子どもたちはどうなるの?」(草土文化)がある。


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