テレビゲームへの正しい理解を
星 幸広先生インタビュー
(千葉大学大学院教育研究科講師)

第1回 ゲームが子供の育成に悪いのではなく、親が理解していないことが問題だと思っています。

星 幸広先生
――星先生は警察で長く青少年の問題に携ってきて、最近では講演会を年間70回以上もおこなっているそうですが、近頃の子供たちの状況はどうでしょうか?

星:私は長く警察に勤めてきました。そして子供の犯罪を担当する部署で、犯罪を犯した数多くの子どもたちとその子を育てた親と接してきました。自信を持って宝物のように育てた子供が留置場に入れられた姿を見たお母さんのショックはどれほどのものか想像に難くありません。へなへなと座り込んでしまう様を何度でも見てきたのです。おそらくお母さん方は、つい最近までよちよち歩きだったかわいい我が子が犯罪を行うなんて想像もできなかったと思います。しかし現実には道を踏みはずした子供たちがいて、その子供たちを育てた親がいます。そうした親子に話をよく聞くと、一緒に住んでいるのに気持ちはすれ違い、かみ合ってないことや、お母さんが子供たちのために良かれと思ってしていたことが、子供のためになっていないことなど、犯罪を行う以前に家庭でも様々な問題を抱えていたことがわかってきます。

そうした長い経験から私は、確信していることが一つあります。それは「生まれながらの悪い子はいない」ということです。ではなぜ、不幸にもそうした道を外した子ができるのかというと、これは親が心配のあまり、「自分の子だけはいい子になってほしい」「立派になってほしい」と、あせっているからなのです。親が子供のことになるとなんにでも口を出す。結局、甘やかしているだけで、躾(しつけ)をしていないのです。それが一番いけないのです。結局過干渉です。

例えば、学校で子供が友達と取っ組み合いの喧嘩したとします。今の親はその局面だけを見て両方の親がうちの子が被害者だと学校にクレームをつけにきます。学校の指導が悪いからウチの子がいじめられたと。学校もたいへんです。本来、もっと長い目で見て判断するべきなのですが、今の局面が親にとってすべてなのです。子供は子供の世界があり、それなりの解決のルールがあるのです。そこが現在の親はわかっていないのです。だからすぐに子供のことに口を挟んでくるのです。

これでは子供の問題解決能力が育ちません。また、友達とのコミュニケーション能力がつかなくなります。あまりに親が口出し過ぎなんです。親の責任です。そうして考えていくと今の子供は“被害者”といえるかもしれません。

――ゲームに対する親御さんの考えはいかがでしょうか?

星:私はよく講演に呼ばれます。テーマとして子供のゲームと携帯電話に関することが多いです。現代社会では避けて通れない問題だからです。どちらも最新の技術の集積です。文明の利器であり、私たちの生活に便利さや楽しさをもたらしてくれるものです。

ゲームも携帯電話も最初は親が子供に買い与えます。ゲームなどは買い与えるときに当然のように、一日30分だけといった時間を限定する約束をします。ですが、それがしばらくすると3時間も4時間も子供たちは遊んでいるケースが多く見られます。

なぜなんでしょうか。当初30分の約束だったのに、ズルズルと時間が延びていって、学校から帰ってきてからずっとテレビの前でプレイしている。そうした光景も決して珍しいケースではありません。そして、お母さんから「うちの子供はずっとゲームばかりして困っています」と相談を受けるのです。挙句の果てに、ゲームが悪いとまでいう親が多いです。ゲームが子供にとって楽しくて、面白くて、だからこそ最初の一日30分の約束が4時間にもなっていくのはゲームのせいだというのです。

しかし、それはよく考えればすぐにわかります。子供がズルズルと時間を守らずゲームをしているのは、ゲームの問題ではなく、間違いなく「躾(しつけ)」の問題なのです。

なぜ、約束をキチッと守らせないのでしょう。最初に30分の約束をして購入したなら必ず守らせる躾が大事なのです。今の親はそうした躾ができないのです。ゲームが子供を悪くするのではなく、躾のできない親が子供の生活に悪影響を及ぼしているのです。

子供がゲームで遊ぶのは良くない。そういった考えの親ならゲームを買い与えないという方法もあります。でも、よく考えてほしいのです。子供は面白ければ、楽しければ、親に隠れてでもします。あるいは親に嘘をついて友達のところへ行ってするかもしれないし、どうしても欲しくて盗むかもしれない。親が子供の行動の全部を監視なんてできないのです。携帯電話も同じですが、「持たせない」「やらせない」というのが一番簡単な方法ですが、果たしてそれでいいのでしょうか。親の管理がラクになるので、携帯電話の所持禁止やゲーム禁止などをすることが正しい事でしょうか。私は違うと思います。

情報化した現代社会で自分の子供だけを隔離するのは無理なのです。そうやって考えると、親が子供に教えていくことが大事です。実際に子供に使わせて良いところ、悪いところを把握させていくことが大切なんです。正しい使い方を教えていくことが何よりも大事です。

親の子供に対する躾が悪いと、30分の約束で買い与えても、それがなし崩し的に4時間に延びてしまうのです。ゲームが悪いのではありません。親の子に対する躾が重要なのです。

ゲームは子供にとって楽しいものなのです。そこを親は理解することからはじめなければなりません。当然のことながら良い面があれば悪い面もある。ですから小さな時からゲームの有用性と悪い面とを教えていくことが必要なんです。子供たちに使わせて正しい使い方を教えることが大切です。「持たせない」、「やらせない」では子供は親の目を盗んでしますから同じなんです。



星 幸広(ほし ゆきひろ)
1944年福島県南会津町生まれ。1963年千葉県警察官となる。警察大学卒業後、千葉県鉄道警察隊長、警察庁警備局(総理大臣警護責任者)、千葉県少年課長、千葉県大原警察署長、千葉南警察署長、地域部参事官等を歴任し、2002年退官。現在、千葉大学大学院教育研究科講師。千葉市スクールガードアドバイザー、千葉市防犯アドバイザー、東京都墨田区「学校法律問題解決支援協議会」専門委員。「子育て・しつけ」や「学校危機管理」に関する講演を全国的に行っている。著書に「実践 学校危機管理ー現場対応マニュアル」「子育ての鉄則」。


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